第5回医学部編入合格記|合格して分かった評価軸〜大分大学医学部に合格した文系・社会人の振り返り〜

【シリーズ】文系・社会人から医学部編入へ ― 全5回の合格体験記

東京大学文学部を卒業後、出版社で営業職として働いていたKさん。「子どものためになる仕事がしたい」という思いを原点に、文系・社会人という立場から医学部編入試験に挑み、大分大学医学部への合格を勝ち取りました。

本シリーズでは、Kさんの医学部編入合格までの道のりを全5回にわたってお届けします。

第1回 医学部編入を目指そうと思った理由
第2回 最初に感じた壁
第3回 続けた対策
第4回 本番で感じたこと
第5回 合格して振り返ること(本記事)

情報が限られる医学部編入という選択肢について、志望理由から受験対策、試験本番の実感、そして合格後の振り返りまで――一人の受験生のリアルな経験を、これから編入を考える方の参考にしていただければ幸いです。

第5回(最終回)
合格して振り返ること ― 編入試験で本当に問われていたもの

自己紹介

こんにちは。
大分大学医学部二年のKです。

私たちは、GW明けから解剖学実習に取り組んでいます。
解剖実習という貴重な機会は、充実した設備や体系的に整えられたカリキュラムがあってこそ成り立つものです。
しかし何よりもありがたいのは、ご自身の身体を医学教育のために捧げてくださったご検体ご本人と、そのご意思を尊重し支えてくださったご家族の存在です。
そのお気持ちに深く感謝しながら、単なる知識の習得にとどまることなく、一つひとつの学びを大切に、自らの血肉としていきたいと考えています。

さて今回はいよいよ最終回です。
大分大学の受験を終えた私が、合格通知を受け取り、二年半にわたる受験生活を振り返って感じたことをお話しできればと思います。

合格発表まで

前回は、大分大学の試験前日と当日をベースに、私が編入試験前後の時間をどのように過ごしたかについてお話ししました。
そこで述べたとおり、大分大学の三次試験を受験した後は、過去一番といってよいほど深く落ち込んでいました。
周りの受験生の発言の鋭さや知識量に圧倒され、自分は到底及ばないのではないかと感じ、完全に意気消沈してしまっていたのです。

そのような中で迎えた合格発表当日。
小さくため息をつきながら、半ばあきらめに近い気持ちで合格者発表サイトを開きました。
そして、自分の受験番号がそこに掲示されているのを見た瞬間も、すぐには信じることができませんでした。

何度も受験票と画面上の番号を照らし合わせ、両方が写るように何枚も写真を撮り、両親にも確認してもらいました。
確かに合格していると分かっても、入学金を支払って手続きを進めても、嬉しさと同時にどこか現実味のない感覚が残り続けていたのを覚えています。

その後、入学式やオリエンテーションを経て、自分の名札を目にしたとき、ようやく「本当に入学できたのだ」と実感することができ、その瞬間、はじめて心の底から安堵することができました。

受験を振り返って、今思うこと

では、この編入試験において、いったい何が評価されていたのでしょうか。
受験期の私は、目の前の試験に対応することで精一杯で、その全体像を冷静に捉える余裕はありませんでした。
しかし、合格した今だからこそ、当時は見えていなかった評価の軸が少しずつ見えてきたように感じています。

もちろん、私一人の経験だけで一般化できるものではありません。
それでも、自分なりに振り返ってみると、評価されていたのは次のような点だったのではないかと思います。

筆記試験においては、やはり知識量、演習量、そして応用力が求められます。
繰り返しになりますが、大学によって重視される点は異なるため、自分の受験校に応じて対策の軸を調整していくことが重要であると考えます。

一方で、小論文や面接においては、単なる知識とは異なる軸で評価がなされているように思います。
私自身の経験から言えば、問われているのは「医師(あるいは医学者)としての将来性」というようなものよりも、医師を志すに至るまでの思考過程とその一貫性、そしてそれを率直で明快な自分の言葉で語れているかどうかであると感じました。

実際、私は複数の大学で面接を受験しましたが、大分大学での面接が最も無理のない自分で臨むことができました。

他大学では、医師としての将来性を感じてもらえるように、自分のこれまでの研究や経歴を何とか医学に結びつけようとし、「こう答えるべきではないか」という意識が先行してしまい、どこか作った受け答えになってしまっていたように思います。
今振り返ると、その頃の私は「その大学の医学部が求める人物像」を探そうとしすぎていたのかもしれません。
質問に対して答えているはずなのに、自分の中でしっくりこない感覚が残り、その違和感がさらに焦りを生むという悪循環に陥っていました。

それに対して大分大学では、無理に整合性を取りにいくのではなく、「なぜ医師を志すに至ったのか」「どのような経験に心を動かされたのか」といった原点に立ち返り、できるだけ自分の言葉で率直に伝えることを意識しました。
うまく話そうとするのではなく、「正確に、自分の思考をなぞるように話す」ことを心がけたことで、自然と受け答えにも一貫性が生まれていったように思います。

その背景には、ある種の開き直りに近い感覚もあったのかもしれません。
どれだけ言葉を尽くして自分を魅力的に見せようとしても、その意図はかえって伝わってしまい、思うような評価にはつながらないのではないかと感じるようになっていました。

受験生時代の私に伝えたいこと

さて、今実際に医学部に入学した私が、もし受験中の自分に一言だけ伝えられるなら、

「そんなに自分を疑わなくて大丈夫。
迷わず勉強しろ!」

と言いたいと思います。

受験期間中の私は、孤独感や幾枚も届く不合格通知、周囲の受験生との比較によって何度も自信を失いました。
不安や劣等感にとらわれるあまり、勉強が手につかなくなる日もありました。
特に理系科目が初修であること、文学部出身で即戦力としてアピールできることが少ないことは、常に劣等感の種でした。

もちろん、そのような背景自体は決して有利ではありませんでした。
しかし、それだけで合否が決まるわけではありません。
大切だったのは、自分の弱さや遠回りした経験も含めて、自分自身の歩みを理解し、それを言葉にできることだったのだと思います。

くよくよ悩まなくていい!一個でも知識を頭に入れろ!と過去の私に檄を飛ばしたい気持ちです。

これから受験する方へ

とはいえ、編入試験が孤独で不安の大きい挑戦なのはやはり事実です。
私自身、二年半の受験生活の中で何度も諦めそうになりました。
それでも、その時間は決して無駄ではなかったと感じます。
勉強を通して知識を身につけただけでなく、自分がなぜ医師になりたいのかを考え続けた時間だったからです。
そして、その思いの強さは、医学部に入学した後に待っている寝不足の毎日や膨大な学習量に向き合う今の自分を、確かに支えてくれています。

結果が出ない期間は苦しいものです。
しかし、その過程で積み重ねた努力や思考は、必ず自分の力になります。
どうか最後まで、自分自身の歩みを信じて進んでください。
皆さんの挑戦を心から応援しています。

この連載が、これから医学部編入を目指す方にとって少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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