2026年版:医学部入試の新たな地平 —— 生成AI時代の「真の学力」と日本の教育課題

はじめに:入試改革の混乱を越えて

2021年度から始まった入試改革は、受験生や教育現場に大きな波紋を広げました。当初予定されていた記述式問題の導入見送り、英語外部試験活用の迷走、そしてe-ポートフォリオの運用断念など、制度面では「表面的な混乱」が目立ったことは否めません。しかし、その混乱の底流にある「評価の軸を変える」という意志は、2026年度入試においてより鮮明な形で現れようとしています。

現在、多くの受験生が共通テストの「冗長な問題文」に対して批判の声を上げています。「これは数学の試験なのか、読解力の試験なのか」という不満は、従来の「パターン学習」に慣れ親しんだ層ほど強く感じているようです。しかし、この変化は単なる嫌がらせではありません。私たちは今、教育のパラダイムシフトの真っ只中にいるのです。

生成AIの浸透と、ブルーム・タキソノミーの現在地

2020年代、生成AI(ChatGPT等)の急速な普及により、社会が求める能力は劇的に変化しました。これからの時代を生きる医師にとって、情報の検索や単なる知識の蓄積は、AIによって代替可能なスキルとなりました。

ここで重要になるのが、教育心理学者ベンジャミン・ブルームが提唱した「タキソノミー(教育目標分類学)」の視点です。

現状の医学部入試、特に各大学の個別試験においては、タキソノミーの「レベル1:知識(想起・記憶)」や「レベル2:理解(解釈・要約)」を問う問題が依然として主流です。膨大な医学的知識の土台となる基礎学力を測る上で、これらのレベルを正確にクリアすることは避けて通れません。

しかし、共通テストが教育理論的なバックボーンとして目指しているのは、このレベル1や2から、さらに「レベル3:応用(適用)」へと重心を移していくことです。AIがレベル1や2のタスクを瞬時に、かつ完璧にこなす時代において、人間が「得た知識を未知の状況にどう当てはめるか」というレベル3以上の能力を磨くことは、将来医師として活躍するための生存戦略としても不可欠なものとなっています。

冗長な問題文が問いかけるもの

共通テストで見られる長いリード文や複数の資料を読み解かせる形式は、一見すると非効率に思えるかもしれません。しかし、実際の医療現場を想像してみてください。医師は整理された教科書のような情報だけを相手にするわけではありません。患者の断片的な言葉、膨大な検査データ、家族の意向、そして刻一刻と変わる容態。それら「冗長でノイズの多い情報」の中から、本質的な課題を抽出し、解決策を導き出す力が求められます。

入試問題の変化は、まさにこうした「実社会・実臨床で求められるリテラシー」への適応を求めているのです。知識を単なるデータとして保持するのではなく、状況に応じて活用できる知恵へと昇華させること。それが、これからの受験生に課された新しいハードルです。

「失われた40年」と偏差値教育の弊害

日本が「失われた30年」を経験し、それが今や「40年」に及ぼうとしている背景には、硬直化した教育システムがあると言わざるを得ません。

世界を見渡すと、東アジア、特に日本、韓国、中国の一部にのみ見られる「一点差刻みの合否判定」と、日本独自の「偏差値」という指標は、若者の多様な才能を画一化し、疲弊させてきました。世界で唯一、偏差値という相対的な数字で自分の価値を測り続ける日本の教育は、創造性を奪い、リスクを取る勇気を削いできました。

偏差値という物差しは、効率的な労働力を大量生産するには適していましたが、答えのない問いに立ち向かう開拓者を育てるには不向きです。医学部入試においても、「1点でも高い偏差値を」と競うあまり、本来医師として備えるべき豊かな人間性や社会への関心が二の次になってきた現状があります。この一点差の壁に固執する文化こそが、日本が世界のイノベーションから取り残された一因ではないでしょうか。

「主体性」と「協働」:資質としての再評価

文部科学省が掲げた「主体性・多様性・協働性」というキーワードは、当初こそ評価の不透明さとして批判を浴びました。しかし、生成AI時代の到来により、これらの資質は「あれば望ましいもの」から「なくてはならない資質」へと昇格しました。

医師の仕事は、決して一人で完結するものではありません。看護師、薬剤師、技師、そして患者本人やその家族。多様な背景を持つ人々との「協働」なしには、現代の医療は成立しません。また、次々とアップデートされる医学知識やAIツールを自ら使いこなし、学び続ける「主体性」がなければ、これからの医療現場でリーダーシップを発揮することは困難でしょう。

2026年度以降の医学部入試において、面接や小論文、あるいは共通テストの思考力を問う設問は、単なる選抜の手間ではなく、受験生が「他者と共に、自ら考えて行動できる個人であるか」を問う、真剣なメッセージなのです。

PMD医学部予備校が提案する「新しい学び」

私たちPMD医学部予備校は、2026年度入試に向けて、単なる「偏差値を上げる指導」を脱却し、時代に即した教育を提供します。

1. 情報の整理と統合能力の育成

個別試験で求められるレベル1・2の知識を完璧に固めた上で、共通テストやこれからの医療現場で必要となるレベル3の「応用力」を養います。冗長な情報を整理し、本質を見抜く訓練を徹底します。

2. 対話型学習による協働の疑似体験

一方的な講義ではなく、講師や仲間との議論を通じて、多様な視点を取り入れる訓練を行います。他者の意見を聴き、自分の考えを論理的に伝える力は、面接対策のみならず、将来のチーム医療の礎となります。

3. 医師としての志を育む指導

偏差値という狭い枠組みに囚われず、なぜ今、医師を目指すのか。AI時代に人間である医師に何ができるのかを共に問い続けます。社会の変化を敏感に捉え、自らの役割を定義できる受験生を育てます。

結びに

日本の教育が抱える一点差の呪縛を解くのは容易ではありません。しかし、入試の形が変わることは、学びの形を変えるチャンスでもあります。

2026年度入試に挑む皆さんに求められているのは、過去のデータに過度に依存し、翻弄されることではありません。基礎となる知識を血肉化し、それを未知の課題に適用し、そして他者と手を取り合って新しい医療の姿を創造していく力です。

失われた40年を終わらせ、新しい時代を切り拓く医師へ。PMD医学部予備校は、その高い志を持つ全ての受験生を全力でサポートします。変革の時代を、共に勝ち抜きましょう。