下水処理場の見学に行きました

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衛生学の授業で、福岡県内でも最大の規模の下水処理場である御笠川浄化センターの見学に行ってきました。
衛生学は衛生的な環境がどのように維持されているのか、ということが重要な学習項目の一つとなっています。
何となく中学校の社会見学のような気分でした。

住宅や工場から排出された下水は下水管の傾斜やポンプを利用して下水処理場に運ばれます。
はじめに最初沈殿池で重力沈降を利用して水中の沈殿性有機物を除去します。その後反応タンクで微生物を利用して有機物を分解します。これを最終沈澱池で沈殿させ、ろ過施設で上澄みを取り出します。最後に塩素消毒を行って放流されます。

下水処理場の大きな課題として、大量に発生する汚泥の処理があります。
以前は海底に投棄したり、埋め立てに利用したりしていました。しかし環境に与える影響を考慮して、近年は汚泥を再利用するようになってきています。御笠川浄化センターでは汚泥を濃縮して体積や重量をなるべく減らし、それらを建築資材や燃料、肥料として再利用しています。さらに、処理過程で発生するガスや熱を再利用することで、エネルギー効率を高める工夫をしています。

汚泥は次のように処理されます。

①汚泥中の有機物の消化

消化槽で汚泥を溜めて、嫌気性微生物の働きによって有機物を分解します。発生したメタンガスは、汚泥溶融炉の燃料、油温減圧式乾燥施設の燃料、管理施設の空調設備の燃料、消化槽の加温のために利用されます。

②汚泥の脱水

消化槽から送られてくる汚泥は池の底の泥のように多量の水を含んでいます。御笠川浄化センターでは以下の2施設を用いて、80%の水分を蒸発させ、さらに72%の可燃分を二酸化炭素として取り除くことによって15分の1まで減量化しています。

A)汚泥溶融施設

汚泥溶融施設は汚泥自体が持つ熱エネルギーを利用してこれを溶融させ、無害なスラグ(石状の黒い塊)とします。汚泥自体が持つ熱エネルギーを利用するため、自燃に近いエネルギー効率を誇ります。排ガスを乾燥設備の熱源として利用することで、さらにエネルギー効率を高めています。

発生したスラグはブロックなどの建築資材の原料として利用されます。特別優れた資材というわけではないのですが、埋め立てなどの処理を行う必要がないという利点があります。

 

B)油温減圧式乾燥施設

増大する汚泥の処理に対応するために、油温減圧式乾燥施設というもうひとつの処理設備が作られました。この設備は、廃棄食用油を用いて天ぷらのように汚泥を高温処理することで水分を蒸発させます。減圧することにより沸点が低くなり、エネルギー効率が向上します。

乾燥汚泥は肥料として利用されます。石炭のような燃料としても利用できるため、一部は火力発電所において石炭に混ぜて使われています。

 

下水処理場が汚水を綺麗にすることよりも、汚泥の処理に気を使っていることは意外でした。
浄水場に比べて影の薄い下水処理場ですが、我々が衛生的な環境に住みきれいな水を使うことができるのは、彼らの陰ながらの努力があったのだと感じました。