東和邦道門診部の見学

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上海で見学した日本人向けクリニックについてです。

 

このクリニックは日本人が多く住む地区にあり、患者の9割が日本人です。診療科は中医科だけでなく、西洋医学の内科、外科、整形外科、眼科、皮膚科、耳鼻科、泌尿器科、婦人科、リハビリ科、歯科、と主だったものはひと通りそろっています。医師や職員には日本人が多く、中国人の職員も日本語を話します。

 

今回訪ねたのは、日本人で初めて上海中医薬大学を卒業し、博士号も取得された藤田先生です。とても明るく、人当たりの良い先生で、たくさんのお話を聞くことが出来ました。糖尿病から癌まで様々な患者が来院し、先生は総合医としてこれら全てを診察しているそうです。先に見学した上海中医薬大附属病院では、診療科が分かれており専門の医師が診察を行っていましたが、大病院以外では藤田先生のように様々な病気を扱う総合医が多いそうです。

 

たくさん伺ったお話の中で特に印象に残ったのが、中医師から見た日本漢方の話でした。日本漢方は江戸時代に独自の発達を遂げ、中国本土とは根本的に体系が異なっています。中国で日本漢方が注目されることはほとんど無いものの、中国ではひとつの学説として受け入れられているというのが、まず驚きでした。一口に中医学といっても、広い中国の中にはもともと多数の学派が存在し、今の体系は毛沢東の時代にこれらがまとめられて出来上がったものです。このため、異なる学説があることに寛容なのです。

 

日本で漢方を扱っている医師の多くが、生薬ひとつひとつの効用を理解していない、ということも指摘されていました。中医学では、単一の生薬のエキス剤が存在することからも分かるように、生薬ひとつひとつの効用を重視しています。葛根湯や麻黄湯などのレシピはあくまで参考であり、処方は患者に合わせて作り上げるもの、という認識を持っています。一方、日本では単剤のエキス剤は製造されておらず、多くの医師は麻黄湯エキスを処方、といったようにレシピどおりの処方を行っています。日本漢方が方証相対(この病態にはこの薬というように一対一に対応させる考え方)という単純化された体系を持つことも要因ですが、そもそも医師たちにレシピをアレンジするだけの知識がない場合が多いとのことでした。先生の意見は理にかなっており、全くそのとおりだと感じました。

 

漢方薬が保険適用になって以来、臨床の場でも教育の場でも、漢方が徐々に注目されるようになってきました。国内外の情報交換が容易になった現在、江戸時代に独自の発展を遂げた漢方が今一度進化を遂げるチャンスが来ているのかもしれません。中国本土の中医学のいい部分を取り入れて、より治療効果の高い漢方に進化してほしいと思います。