トヨタ自動車九州工場の見学

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衛生学の授業でトヨタ自動車九州工場の見学に行ってきました。医師の中には産業医とよばれる、労働者が安全で健康的に働けるように指導する医師がいます。今回の見学は、トヨタ自動車九州工場が安全や健康にどのように気配りをしているのかを学ぶのが目的でした。

トヨタ自動車九州工場は広大な敷地に2系統の製造ラインを持ち、約7700人が勤務しています。今回の見学では、組み立て工程の生産ラインを見学しました。自動車は2~3万もの部品で構成されており、組み立て工程ではこれらを流れ作業で取り付けていきます。一人が遅れるとライン全体が止まってしまうため、作業員には正確な作業を長時間継続することが要求されます。

以前は組み立て工程の多くを人手に頼っていました。重い部品を持ち上げて取り付けたり、負担のかかる姿勢で取り付けを行ったりすることは、作業員に過大な負担をかけるものでした。トヨタ自動車九州工場は、こうした問題は改善するために次のような取り組みを行っていました。

1.人間とロボットの分業

シートやタイヤなど重い部品を人力で持ち上げることは、作業員の足腰に大きな負担をかけます。こうした作業をロボットが行うことにより、作業員の負担を軽減していました。一方、ねじ締めやゴムの取り付けなど細かく複雑な作業はロボットが苦手とする作業であり、人手で行うようになっています。

2.作業姿勢を楽にするための工夫

天井や足元の低い位置に部品を取り付ける際には、足腰や首に大きな負担がかかります。そこで、ドアの取り付けを最後にすることで作業員が取り付け作業を行いやすいようにしていました。さらに、車内の取り付けをするときに中腰になったり大きく上を見上げたりしなくて済むように、らくらくシートという装置を使っていました。これは金属アームの先のイスに作業員を固定する装置で、位置や角度を様々に調整できるものです。また、作業しやすい高さまで車体が自動的に高さ調整されるようになっていました。

3.その他

他にも、引き金付き工具のトリガーが堅すぎて、指に負担がかからないか、工具の振動が強すぎないか、など配慮すべき項目があります。トヨタ自動車九州工場では、トリガー強度等、騒音、粉じん、有機溶剤、特定化学物質、紫外線、電離放射線などの多数の項目について独自の基準を設けて管理していました。産業医は、定期的に工場を視察してこうした項目が適切に管理されているかを確認したり、作業員のカウンセリング相談を行ったりしています。

トヨタ自動車九州工場では、さすが日本が誇る一流企業だけあって、社員が安全・健康的に働ける環境を作るために様々な工夫を行っていることが感じられました。