【獣医師のたまご応援コラム】獣医学生の生活~3年生編~

【獣医師のたまご応援コラム】獣医学生の生活~3年生編~

皆さん、こんにちは。現役獣医学生によるコラム、第4回目です!
前回は最初の難関といわれる2年生の生活について紹介しましたが、いかがでしたか。
今回は中間学年である3年生の暮らしについて紹介していきたいと思います。

 

私達の暮らしに大きくかかわる「公衆衛生」の授業

2年生では解剖や組織学といった6年間の土台になる基礎の部分を徹底的に学んできました。
一方3年生になると、動物だけでなく人々の暮らしに大きく貢献する「公衆衛生」関連の授業を多く学んでいきます。

 

「獣医師なのに人間のことをやるの?」

と思う人もいるかもしれません。
私もそうでした。(笑)

 

一般的には獣医師は動物のお医者さんというイメージが強いと思いますが、「獣医師の誓い-95年宣言」において“獣医師は動物の健康に責任を有するとともに、人の健康についても密接に関わる役割を担っている”と示されています。

 

実際、獣医師の仕事には犬猫などの伴侶動物や牛豚といった産業動物の診断・治療以外にも、食肉検査所で食の安全をサポートする仕事、保健所で人々の豊かな暮らしを守る仕事、空港検疫官として海外から動物や畜産物の感染症の侵入を防ぐ仕事、感染症研究で動物から人へ伝播する病気の解明に取り組む仕事など様々な仕事があります。

3年生での授業はこうした「人の暮らしを守る」仕事に役立つ知識が多く学べます。

 

意外と可愛くみえてくる?寄生虫学

3年生で学ぶ寄生虫学は、臨床に進む人にとっても公衆衛生関連に進む人にとっても大変役立つ分野です。
医学部の友人に聞いた際、寄生虫に関してはそこまで深くは学ばないとのことだったので、寄生虫に興味があって深く学びたい人には獣医学部が最適かもしれません。(笑)

 

寄生虫学で大変なことはとにかく覚えることが多いこと。

 

ただでさえ多くの種類を覚える必要がありますが、加えて虫卵の形状や感染経路、感染した動物や人の症状など覚えること山積みです。
座学でたくさんの寄生虫を覚えた後は、実際に実習で虫卵や虫体をみてスケッチを行います。

 

いろいろな寄生虫を描いていきますが、そのうち“ハジラミのあたまが羊みたいでかわいい”などと推しの寄生虫ができる学生もでてきます。

糞便のなかから顕微鏡で寄生虫の虫卵を捜す作業は、ミッケやウォーリーを探せ!をやっているみたいで個人的に楽しいです。(笑)

 

一番難しい病理学

おそらくみんな同意してくれることと思いますが、病理学は獣医学部で学ぶ授業の中で一二を争う難しい教科です。
病理は動物の病気の原因や症状を幅広く学ぶ、いわば動物の病気の総まとめみたいな分野です。
それは難しいわけだ。(笑)

 

そして、座学もちろん大変ですが、病理は実習もすごく難しい。
病理の実習には大きくわけて2分野、病理解剖と病理組織があります。
病理解剖ではなぜその動物が死んだのか、解剖をしながら原因を探っていきます。
病理解剖には手順があるのですが、頭ではわかっていても上手くできない、経験が大切な分野です。
私は未だに苦手です。(笑)

 

病理組織では組織構造を顕微鏡で確認し、異常をみつけて診断をつけます。
つまり2年生で正常な組織像をマスターできてなければ、すごく苦労することになります。
私自身このコラムを書きながら、基礎分野がとても大事なことを痛感しております。(笑)

 

コロナにも関係してくる感染症学

コロナにも関係してくる感染症学

私達の暮らしを大きく変えた新型コロナウイルス。

コロナの発生源に関しては未だ不明な点が多いですが、説の一つとして野生動物を食べたことで感染症が動物から人に伝播したのではというものがあります。
動物と人とが共通して感染する病気を人獣共通感染症と呼びますが、この人獣共通感染症の分野には獣医師の力が大切になってきます。
感染症学では動物の間だけの感染症に加え、こうした人獣共通感染症についても多く学んでいきます。

 

獣医学分野で有名な言葉として“One Health”というものがありますが、この言葉が表すように動物の健康と私達人間の健康は非常に密接に関わっています。
感染症学で得た知識は、冒頭で紹介した獣医師の誓いで示されている「人の暮らしへの貢献」に大きくかかわってくることと思います。

 

 

以上、3年生で学んでいく授業を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は勉強のことばかり紹介しましたが、3年生にもなるとだいぶ学校生活にも慣れ、バイトやサークルと両立しながら充実した毎日を送れることと思います。
6年生となった今思うと3年生のころが一番楽しかったかも…(笑)
次回はいよいよ後半にさしかかった4年生の暮らしについて紹介したいと思います。
それでは、また。

 

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