医学部編入の志望理由書の書き方|経験・医師像・大学との接点を整理
この記事の要点
- 出願時に提出する文章は、名称・字数・提出時期・使われ方が大学で違います。2027年度は、大分大学が出願時に1,000字以内の課題小論文(第1次の書類選考の対象)、香川大学が第1次合格後に約2,000字の自己推薦書、群馬大学が出願時に「自己紹介と抱負」(第1次の採点対象外で面接の資料)を求めていました。
- 書き始める前に、経験を「事実」「気づき」「学び直す必要」「将来の方向」「大学との接点」に分けて書き出すと、経歴の羅列になりにくくなります。
- 推敲では、事実・論理・具体性・大学との接点・面接との一致の五つを点検します。
医学部編入の志望理由書では、経歴を並べるだけでなく、その経験から何を考え、なぜ医学を学び直すのかを説明することが大切です。この記事では、大学ごとの書類の違いを確かめる方法と、経験を整理して推敲する手順を解説します。基本的な構成の型と800字の文例は医学部編入試験の志望理由書の書き方と成功例で紹介しています。
書類の名称・字数・提出時期・使われ方を確かめる
志望理由書、課題小論文、自己推薦書など、求められる文章の名称と役割は大学によって違います。同じ原稿をすべての大学に使う前に、何を問われ、いつ提出し、選抜のどこで使われるのかを確認してください。
| 大学(2027年度) | 求められた文章 | 提出時期と形式 | 選抜での使われ方 |
|---|---|---|---|
| 大分大学 | 課題小論文(大学での学びや活動を今後どう生かし、どのような医療人・研究者を目指すか) | 出願時。自筆・横書き・1,000字以内 | 第1次の書類選考(100点)の対象 |
| 香川大学 | 自己推薦書(大学・大学院で修得した専門的知識や社会活動で得たもの、その経験からどのような医師・医学研究者を目指すか)と、研究課題・論文リスト | 第1次合格後に提出(6月26日まで)。自己推薦書は約2,000字、パソコン等で作成 | 第2次の面接の資料 |
| 群馬大学 | 自己紹介と抱負(様式3) | 出願時 | 第1次の採点対象外。第2次の適性の判断と面接の資料 |
| 名古屋大学 | 医学研究者を志望する理由、現在までの研究について、研究業績 | 出願時。字数は要項に記載なし | 医学研究者の養成を目的とする選抜の出願書類 |
出典:各大学の2027年度募集要項(群馬大学は大学サイト掲載の見本)、香川大学医学部「第2年次編入学」。
同じ「志望理由」でも、大分大学の課題小論文は筆記より前の段階で点数がつき、香川大学の自己推薦書は面接の土台になります。名古屋大学は在学中の5年間、研究室に所属することを求めており、研究への意欲を説明する書類が中心です。書類の役割が分かると、どこに力を入れるべきかが見えてきます。
経歴を並べる前に経験を分解する
経験を整理するときは、「いつ、どこで、何を担当し、何に気づいたか」を事実として書き出します。研究成果、職務上の役割、個人的な経験は性質が違います。自分が直接行ったことと、チームや周囲が行ったことを区別しましょう。
| 整理する項目 | 書き出す内容 | 点検すること |
|---|---|---|
| 経験 | 研究、仕事、学習、活動の事実 | 自分の役割を説明できるか |
| 気づき | 経験から生じた疑問や問題意識 | 一般論だけになっていないか |
| 学び直す必要 | 不足している知識や能力 | 医学で学ぶ理由があるか |
| 将来の方向 | 関心を持つ医療・研究の課題 | 現時点の理解に無理がないか |
| 大学との接点 | 教育内容、学び方、研究環境 | 大学の公式資料で確かめたか |
強い動機があっても、きっかけだけで文章を終えないことが大切です。経験の後にどのような情報を調べ、どのような学習や行動をしたかを添えると、今の決断までの過程が見えます。大きな実績がなくても、具体的に考え続けた経緯は整理できます。
なぜ医師を目指すのかを具体的にする
「人の役に立ちたい」「医療に貢献したい」という思いは出発点になります。ただし、それだけでは、今の仕事や別の専門職ではなく、医学を学んで医師を目指す理由が十分に伝わらないことがあります。自分が関心を持った課題に、医師としてどう関わりたいかを考えます。
ほかの職種の価値を下げる必要はありません。医療には多くの専門職が関わり、それぞれに役割があります。今の経験を否定して新しい進路を正当化するより、その経験で見えた課題と、さらに必要だと考えた学びを説明しましょう。
医療現場への理解がまだ限られている場合は、その限界も踏まえて書きます。短い見学やニュースだけから現場全体を断定することは避けてください。分かったことと、これから学ぶ必要があることを分けると、学び直しに向かう姿勢がはっきりします。
研究や職務の専門性を読み手に伝える
研究経験を書くときは、テーマ、目的、自分の担当、得られた知見、残った課題を簡潔に整理します。専門用語を並べるより、なぜその研究をしたのか、どう考えて進めたのかを、専門外の読み手にも伝わる言葉で示すことが重要です。名古屋大学のように研究業績の提出を求める大学では、業績の一覧と文章の説明が食い違わないように確認します。
職務経験では、肩書や勤務先の知名度より、自分が向き合った課題を説明します。人との調整、情報の整理、継続的な改善などの経験を、医療でそのまま通用すると言い切らず、今後の学びにどう生かしたいかとして書くと、説明に無理が出にくくなります。
文系の学習も理系の研究も、医学との接点を無理に作る必要はありません。まず経験そのものを正確に説明し、それを通じて身につけた問いの立て方や、人への向き合い方を考えます。
構成は設問の指定に合わせる
文章の骨格としては、問題意識、根拠となる経験、医師を目指す理由、志望大学での学び、将来の方向という流れが考えられます。ただし、大学の設問に順序や項目の指定があれば、そちらを優先してください。香川大学の自己推薦書のように二つの項目が示されている場合は、それぞれに対応する段落を作ります。
各段落には役割を一つだけ置きます。一つの段落に研究紹介、家族の経験、大学の特徴、将来像をすべて入れると、因果関係が見えにくくなります。段落ごとに一文の要約を付けてみると、同じ内容の繰り返しや抜けている説明に気づきやすくなります。
初稿では、字数に合わせて削る前に材料を十分に出します。そのうえで、設問に直接答えている部分を残し、抽象的な美辞麗句や重複する経歴の説明を削ります。読み手が「なぜその結論になるのか」をたどれるかを確かめましょう。
推敲では事実・論理・大学との接点を点検する
| 点検する観点 | よくある問題 | 直す方向 |
|---|---|---|
| 事実 | 自分の担当以上の成果を書いている | 本人が説明できる範囲に戻す |
| 論理 | 経験から医師志望への飛躍がある | 気づきと学び直す必要を補う |
| 具体性 | 使命感などの抽象語を繰り返している | 行動や調べた内容を添える |
| 大学との接点 | 大学名だけを入れ替えた文章になっている | 教育内容との関連を確かめる |
| 面接との一致 | 文章では書けても口頭では説明できない断定がある | 自分の理解と表現に整える |
第三者に見てもらうときは、「良い文章ですか」と尋ねるだけでなく、志望理由が伝わるか、分かりにくい用語があるか、経験と結論の間に飛躍がないかを確認してもらいます。指摘を全部取り入れるのではなく、設問に照らして必要な修正を選びます。
推敲の途中で志望理由そのものが変わることもあります。その場合は、末尾の文章だけを直さず、全体の整合性を見直してください。完成稿と材料のメモを保存しておくと、面接で深く質問されたときに、自分がどの事実から考えたかを確かめられます。面接での話し方は面接準備の記事で扱っています。
手書き・字数・生成AIの扱いも確かめる
大分大学の課題小論文のように、自筆で書くことが求められる書類もあります。下書きを入力で作る場合も、清書にかかる時間と、訂正のしかたの指定を確認しておきましょう。字数は「以内」「程度」など表現が大学で違うため、要項の言葉どおりに受け取ります。
生成AIで表現を整える場合も、事実、大学の情報、自分の考えは本人が確かめます。経験や実績を補って生成させた文章を、そのまま使わないでください。大学が出願書類の作成について条件を示している場合は、それに従います。AIを学習に使う方法は医学部受験に生成AIを活用する方法でも紹介しています。
よくある質問
医学部編入の志望理由書に研究実績は必須ですか?
大学によります。2027年度は、名古屋大学が研究業績、香川大学が研究課題・論文リストの提出を求めていました。条件は大学ごとの募集要項で確認し、文章では自分が実際に学び、行動し、考えたことを正確に説明してください。
志望理由書は大学ごとに書き分けるべきですか?
本人の経験や基本的な志望理由は共通でも、設問、字数、提出時期、選抜での使われ方は大学で違います。大学名だけを変えず、求められる項目と学びの接点を確かめて調整しましょう。
手書きで提出する場合に気をつけることはありますか?
清書にかかる時間と、訂正のしかたの指定を確認します。2027年度の大分大学の課題小論文は、自筆・横書きで1,000字以内とされていました。下書きの段階で字数と構成を固めてから清書します。
合格者の文章を参考にしてもよいですか?
構成や説明のしかたを学ぶ資料としては参考になります。ただし、他人の経験や表現を自分のものとして使わず、本人の事実と考えから文章を作ってください。
執筆・編集:PMD医学部専門予備校 講師チーム
監修:岩崎 陽一(株式会社アクト 代表取締役)
医学部受験と医療系国家試験の指導に30年以上携わり、PMD医学部専門予備校をはじめとする医療系予備校を運営。
最終更新日:2026年11月4日
参考資料・公式確認先
- 大分大学「令和9年度 医学部医学科 第2年次編入学試験 学生募集要項」
- 香川大学「2027年度 医学部医学科第2年次編入学(学士編入学)学生募集要項」
- 香川大学医学部「第2年次編入学」日程・各種様式
- 群馬大学医学部医学科「2027年度(2026年度実施)第2年次編入学」
- 名古屋大学医学部医学科「2027年度 第2年次学士編入学学生募集要項」
情報確認日:2026年11月4日。大学別の情報は記載年度の募集要項・公式ページにもとづく実例です。出願資格・試験科目・日程・提出方法は、受験する年度の大学公式募集要項と変更案内で必ず確認してください。学習手順は個人の状況に応じて調整する提案です。

