九州大学医学部│化学の傾向と対策

九州大学医学部の傾向と対策(化学)を、年度ごとに掲載しております。過去から遡って確認する事により、より良い傾向を掴み対策を立てることが可能です。

 

※難易度・スピードの☆印は5段階評価になります。

2023年度入試

科目 化学 解答時間 理科2科目150分
難易度  ☆☆☆ スピード  ☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論  ファンデルワールスの状態方程式、実在気体、蒸気圧(20字)⇒論述・計算 記号選択

記述

計算

標準
2 理論  解離エネルギーと黒鉛の燃焼熱、グルコースの生成熱 ⇒計算 空所補充

計算

標準
3 無機・理論 金属イオンの反応と錯イオン、酸化還元滴定 ⇒計算 空所補充

記号選択

標準
4 有機・理論 ベンゼンとシクロヘキセンの誘導体の反応と構造決定、フェノール樹脂 ⇒計算 記号選択

計算

標準
5 有機・理論 単糖類と二糖類の構造、多糖類の性質、ビニロンの合成 ⇒計算 記述

記号選択

計算

標準

傾向と対策

2021年度は大問4問であったが、例年は5題の出題。理科2科目で150分。記述式が中心。物質名や化学式、反応式、構造式など記述に加えて計算問題も出題されている。計算問題は解答欄に結果のみを書く形式が多いが、導出の過程を書く設問が出題されたこともある。2019年度は文字式の回答が多く、2021年度も文字式の一部を選択肢から選ぶ設問が出題された。数値計算では有効数字も指定される。また、選択式で文章の正誤判断をするもの、語群から正しい語句や文章を選ぶものも出題され、2023年度は20字程度の論述問題が出題された。過去には描図問題が出題されたこともある。出題範囲は「化学基礎・化学」である。「化学基礎」の理論分野からの出題は少ないが、基本的には理論と有機中心の出題である。無機は理論と絡めて出題されることが多いが、年度によって出題分野や出題内容に変化がある。また、無機・有機分野の大問でも計算力や思考力・応用力を要求される設問が出題される。標準問題から発展問題まで出題範囲は幅広い。問題文の説明をよく理解しないと解答しにくい設問が多く、問題演習の量と思考力、および計算力で差がつきやすい内容である。大問により難易度に幅があるので、時間配分と解く順序に注意が必要である。

【理論】全体的に理論分野の比重が大きく、無機分野や有機分野の大問でも、理論分野の設問が組み合わされることが多い。新傾向の設問や、思考力・応用力の必要な設問に対応するためには、過去問などレベルの高い問題に取り組み研究しておくと有効である。

【有機】例年、後半の大問は有機分野からの出題が多く、2023年度は特にこの分野の問題の難度が高かったこともあり、全体の得点を決める大きな要素といえる。異性体の立体構造などの思考力重視の問題まで十分に慣れておけば、高得点が狙えるだろう。

【無機】単独の大問として出題されることは少なく、年度によって出題傾向の変化が大きい。教科書レベルの化学式や反応式は、細かなところまで確実に書けるようにしておく必要がある。

【実験考察問題対策】教科書の探究活動などに目を通し、実験リポートなどを活用して実験方法や実験結果の意味をよく理解しておくことも応用力の向上に繋がる。

【計算・論述・描図問題】様々な定数や単位の取り扱いに慣れ、有効数字の取り扱いに注意する事。論述問題では、化学用語を正確に用いることと、設問意図にあった解答を書くことを心がけよう。過去には、グラフを描かせる問題が出題されたこともあるので、注意が必要である。


2020年度入試

科目 化学 解答時間 150分 (理科2科目)
難易度 ☆☆☆☆ スピード ☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論 平衡の移動と平衡定数、活性化エネルギーとアレニウスの式 空所補充
記号選択
標準
2 理論 マンガン乾電池とアルカリマンガン乾電池の反応と電極の変化 空所補充
記述
標準
3 無機・理論 ハロゲンの単体とその化合物の性質、ヨウ素の結晶構造 空所補充
記述
標準
4 有機・理論 C6H10の脂肪族炭化水素の参加開裂反応、立体異性体 記述 標準
5 有機・理論 アミノ酸の鏡像異性体と構造異性体、テトラペプチドの構造 記述 標準

傾向と対策

大問5題で、解答時間が理科2科目で150分間の試験である。解答形式は記述式が中心で、物質名や化学式、反応式、構造式、計算問題の結果のみあるいは導出の過程を書かせる問題が出題されている。出題範囲は化学基礎・化学であり、中でも理論分野と有機分野から主に出題されている。難易度は基本的な内容も出題されるが、標準~発展レベルの問題もある。傾向と対策について、理論分野では原子の構造と物質量、熱化学、酸・塩基と塩、中和反応とpH、酸化還元と電池・電気分解が頻出である。また理論分野は全体的に比重が大きく、無機分野や有機分野の設問でも組み合わせて出題されることが多い。そのため応用力や思考力が必要なので過去問などのレベルの高い問題演習を積むことが必要である。無機分野は多くが理論分野との融合問題として出題されている。頻出問題の気体の製法と性質、金属イオンの反応と錯イオンの構造や性質、工業的製法について確実に理解しておこう。有機分野は脂肪族・芳香族の反応名や構造式、化学反応式をよく問われる。そのため代表的な化合物の性質や反応を理解しておくことが大切である。有機分野の出題も多く、得点源になりうる。比較的出題パターンが限られているが差がつきやすいので、必ず得点源にしたい。

2019年度入試

科目 解答時間
難易度 ☆☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1
2
3

傾向と対策


2018年度入試

科目 解答時間
難易度 ☆☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度

傾向と対策


2017年度入試

科目 化学 解答時間 150分
例年5題。年度によって出題される分野が大きく変化する。
難易度 ☆☆☆ スピード ☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論 問2水は極性が強いのと分子間の水素結合により沸点が高くなる。問3水素結合の数による差 問5非共有電子対の数はオキソニウムイオンでは1つ、水分子では2つでありそれらの反発が大きいほど結合角は小さくなる。 記述、選択 標準
2 理論 問1単位時間当たりの物質の変化量を求める。問4反応前、変化量、平衡時の濃度を問3に当てはめる。問5~7式が1つの場合と同じように、XYZQそれぞれの増加量と減少量を2つの式から求める。 記述 やや難
3 理論
無機
問1反応熱は右辺の生成熱の和から左辺の生成熱の和を引く。問2(エ)二酸化炭素x㏖、一酸化炭素2x㏖とすれば10×3+21×2=2x×1+x×1でx=18㏖(オ)炭素の物質量は一酸化炭素と二酸化炭素の物質量と等しいので18×2+18×1=54㏖ 記述、選択 標準
4 理論
有機
問1元素分析。組成式はC3H5。問4Bは分子内に二重結合を2つもつ。問5シスーシス型、シスートランス型、トランスートランス型の3つある。問7Gは酸化されないので第3級アルコール 記述 標準
5 理論
有機
問2・4結果①の黒色沈殿はPbS、結果②はベンゼン環のニトロ基に起因するキサントプロテイン反応、結果③はイソロイシンのみ側鎖に不斉炭素原子をもつ。問5YはX2分子がジスルフィド結合してできたもの。131+181+121-(18×2)=397、397×2-2=792 記述、空欄補充 標準

傾向と対策

標準的なものから発展まで幅広く出題され、理論では毎年1~2問少し難しい問題が含まれる。思考力が必要な問題に関しては、誘導に乗れば解ける問題や教科書にある発展に触れておけば解ける問題がほとんどであるため、過去問を使って問題に慣れておくとよい。

2016年度入試

科目 化学 解答時間 75分
難易度 ☆☆☆ スピード ☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 周期表・遷移元素 問1から問6までは知識問題。周期表を空で言えることはもちろん、一般的なNaまでの暗記ではなくKrまでは最低でも覚えたい。遷移元素の電子配置も覚えておく必要がある。

問7は複雑に見える問題だが標準レベル。組成式が電気的に中性であるという条件から、2つの文字の連立方程式を作る。

記述 標準
2 結晶格子・気液平衡・化学平衡 問1は穴埋の計算問題。結晶格子の問題は典型的で解きやすい。気液平衡の問題は電離平衡と絡めた問題でやや難。電離したCO2を数値的に無視できることに慣れておかないと計算は複雑になる。気相と液相の状態を正確に把握できるかが問われている。その他の電子式を答えさせる問題や、現象名を答えさせる問題は基礎レベル。 記述 標準
3 反応速度・半減期 問1および問2は反応速度に関する標準的な問題。

反応速度の定義式やその意味を正しく理解していればなんなく解ける。問3では半減期に関する問題で、解き慣れない印象があり戸惑うかもしれない。問題文に半減期に関する式とその意味についての言及がある。式自体は解答に使用しないが、その式から半減期が何によって決まるものなのか見抜きたい。文章でもその点に関して言及があるため、6時間後の1/8の濃度になった問題設定に気付けば解答は容易。

記述 標準~やや難
4 有機化合物の分類 混合物を実験結果から推定する問題。混合物Xに関する条件である分子量と反応結果から正しく成分を読み取らないといけないが、アセタール化・加水分解・エステル化・ビニロンの製法など細かい分野からの出題となっており、完答には十分な知識量が必要となる。実験結果だけからは成分物質の分子式を決定できないようになっており、候補をいくつか挙げ、分子量から特定するよう誘導されている。この大問の正答率が合否の要。 記述
5 糖類 問1から問6までは知識問題であり、第5問に比べ難易度は低い。ただし、フルクトースのエンジオール構造に関する平衡を問う問題など、正確に構造式レベルで暗記しておくことが求められる。問7のフェーリング液に関する定量問題は医系の二次試験でよく見かける問題である。難易度は標準レベルなので、正答したい。 記述 標準

2015年度入試

科目 化学 解答時間 2科目150分
難易度 ☆☆☆ スピード ☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 気体(実験による分子量の決定および物質の特定) 記述式 標準
2 水溶液の性質、熱化学、反応速度、中和 記述式 標準
3 金属イオンの分離 記述式 標準
4 芳香族化合物 記述式 標準
5A 高分子化合物 記述式 標準
5B 記述式 標準

傾向と対策

各事象の本質的な理解を問う

例年通り標準的な問題。単なる暗記で解ける問題ではなく、各事象の本質的理解を問う出題となっている。また確実な計算力も要求される。


2014年度入試

傾向と対策

構造決定を確実にとる

理論分野から多く出題され、難易度はやや高い。化学平衡や電離平衡をはじめとする化学Ⅱの分野は、その原理をしっかりと理解しておく必要がある。一見高校範囲を超えたように見える問題でも、誘導に従っていけば解ける問題である。論述問題も多く出題されるため、丸暗記ではなく、「なぜそうなるのか」ということを各事項について考えながら学習しておくとよい。『化学Ⅰ・Ⅱの新研究』および『化学Ⅰ・Ⅱの新演習』という参考書を使って、理解を深めておきたい。

理論分野は化学結合から化学Ⅰの熱化学、酸化・還元などの知識をしっかりと固め、化学平衡の問題を中心に演習しておく。

無機分野は教科書レベルの反応式はすべてかけるようにしておく。工業的製法については計算問題が出題されやすいため特に注意しておく。

有機分野は元素分析、構造決定はどんな問題でも解けるように、数多くの問題を用いて演習を行っておく。東京大学、京都大学の構造決定の問題にも挑戦してみるとよい。